第四十六回宮城県俳句賞準賞作品2022.04.21 11:49素 描 齋藤 善則(滝) 雨粒の磨きあげたる竜の玉舂きの名もなき岬野水仙鳥籠の鳥に声かけ蒲団干す牡蠣飯を炊きただいまの声を待つ冬うらら小屋より放つ伝書鳩昃れば素描のごとき春の山下萌に風の尾ふれてゆきにけり早春のバス待つ列に加はりぬ神妙に春菊の香を嗅ぐ子かな...
第四十六回宮城県俳句賞正賞作品2022.04.21 11:46あたたかし 佐藤 信昭(駒草)朝の日の眩しき水の淑気かな蠟梅の散り際永き鳥の声退院のこの世の坂のあたたかし葉柳のそよりともせぬ地の乾き薄き日に田水の匂ひ夏隣ばら咲かせ五感萎えゆく健やかに梅雨寒の雨音ひびく膝頭梅雨湿る外して重き腕時計呼鈴の返事のやうに夏うぐひす花栗の無住の闇に匂...
第四十五回宮城県俳句賞正賞作品2021.02.10 16:23きのふの齟齬 丸山みづほ(小熊座)ひと切れの梨に始まる日曜日五線紙より音符飛びさう星月夜縞馬の縞の汚れや冬隣木枯一号駱駝の瘤の尖り出す炉火をつぐ父の胡坐にいつも猫青空へ切手を貼りて大旦小米雪鈴木牧之が向うから一枚の笹を抱きて薄氷片減りの夫の皮靴遠蛙母の日や畳んで捨つる包装...
第四十四回宮城県俳句賞正賞作品2020.10.10 16:21 狐 火 小田島 渚(銀漢・小熊座)どこをどう辿りてもつく死や朧卵ならそろそろ孵る春炬燵春夜へと産み落とさるる黒き山羊悲しみのみぞおち落花吹き溜まる粉々に花瓶割るるは薔薇の怒り五月鯉の目玉のなかに津波まだ金魚玉世界いづこも歪みゐるぼうふらの沈むときこそきらきらす百年を生き...
第四十回宮城県俳句賞正賞作品2016.02.10 16:24五 番 街 小野寺みち子(河)水澄みてモジリアーニのうなじかな日の匂ひ土の匂ひの落ち葉踏む主旋律奏づるチェロや冬銀河コンサート果てて聖樹に灯の点る劇場の張り出し席に年惜しむ大嚏してニューヨーク五番街着ぶくれて遠巻きに見る大道芸装丁の金の縁どり春立てりぼたん雪しばらくは灯を...