五 番 街 小野寺みち子(河)
水澄みてモジリアーニのうなじかな
日の匂ひ土の匂ひの落ち葉踏む
主旋律奏づるチェロや冬銀河
コンサート果てて聖樹に灯の点る
劇場の張り出し席に年惜しむ
大嚏してニューヨーク五番街
着ぶくれて遠巻きに見る大道芸
装丁の金の縁どり春立てり
ぼたん雪しばらくは灯を消ししまま
龍天に潜水艦は浮上せよ
告白の続きは亀の鳴いてょり
花曇り紙ナプキンに書く略図
占ひの手順教はる朧の夜
語るやうささやくやうにさくら散る
花は葉に野外ラィブの出番待つ
罌粟の花漢ばかりの珈琲館
薔薇香る王女の名前はシャーロット
乾杯につづく喝采薔薇の雨
新郎の肩先に雨薔薇に雨
薔薇の渦記憶のフィルム巻き戻す
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