第四十五回宮城県俳句賞正賞作品

きのふの齟齬     丸山みづほ(小熊座)

ひと切れの梨に始まる日曜日

五線紙より音符飛びさう星月夜

縞馬の縞の汚れや冬隣

木枯一号駱駝の瘤の尖り出す

炉火をつぐ父の胡坐にいつも猫

青空へ切手を貼りて大旦

小米雪鈴木牧之が向うから

一枚の笹を抱きて薄氷

片減りの夫の皮靴遠蛙

母の日や畳んで捨つる包装紙

「ステイホーム」五月の空の青すぎる

白熱の議論の中のパイナップル

灼け土を踏み来し母の土踏まず

わが生家昭和のままや糸とんぼ

すべりひゆ這ふ乾ききつたる土を這ふ

ひしやげたる空蝉を手に蝉しぐれ

百日紅まだ濡れてゐる友の墓

朝顔や支柱の先は濁世なる

触れすおくきのふの齟齬も亀虫も

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