きのふの齟齬 丸山みづほ(小熊座)
ひと切れの梨に始まる日曜日
五線紙より音符飛びさう星月夜
縞馬の縞の汚れや冬隣
木枯一号駱駝の瘤の尖り出す
炉火をつぐ父の胡坐にいつも猫
青空へ切手を貼りて大旦
小米雪鈴木牧之が向うから
一枚の笹を抱きて薄氷
片減りの夫の皮靴遠蛙
母の日や畳んで捨つる包装紙
「ステイホーム」五月の空の青すぎる
白熱の議論の中のパイナップル
灼け土を踏み来し母の土踏まず
わが生家昭和のままや糸とんぼ
すべりひゆ這ふ乾ききつたる土を這ふ
ひしやげたる空蝉を手に蝉しぐれ
百日紅まだ濡れてゐる友の墓
朝顔や支柱の先は濁世なる
触れすおくきのふの齟齬も亀虫も
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