素 描 齋藤 善則(滝)
雨粒の磨きあげたる竜の玉
舂きの名もなき岬野水仙
鳥籠の鳥に声かけ蒲団干す
牡蠣飯を炊きただいまの声を待つ
冬うらら小屋より放つ伝書鳩
昃れば素描のごとき春の山
下萌に風の尾ふれてゆきにけり
早春のバス待つ列に加はりぬ
神妙に春菊の香を嗅ぐ子かな
卵焼ふつくら揚雲雀まぶし
沖を行くタンカーさくら貝に波
別々に来て共に見る桜かな
田水張り村に活気の戻りけり
野いばらの仄かににほふ草野球
無防備な腹の向き合ふ三尺寝
秒針の無き砂時計汗を拭く
香水や一番線に恋をはる
美術館出て潮騒と凌霄花
銀河系の端つこに住みハンモック
町境越えて広がる刈田かな
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